ライ麦畑でつかまえて
- 2018年10月14日
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私が学生時代、レコード(まだCDがなかった時代です)をお店で選ぶ際、収録曲が聴けない状況の中から1枚を選ぶときに迷うことがありました。
「ジャケ買い」と称し、中身の如何に関わらず、ジャケットに惹かれて思わず購入してしまうレコード。
ワインのエチケット(ラベルと呼ぶ方もいらっしゃいます)。
有名なのは、Chateau Mouton-Rothshild(シャトー・ムートン・ロートシルト)。
1924年から毎年、世界的アーティストが描くオリジナルラベルは、余りに高価過ぎて手にできない私にとっても、「今年発売されるムートンのエチケットは、誰の作品なんだろう?」と普通に関心を抱いています。
生まれて初めて飲んだ1989ヴィンテージには、その年最も大きな歴史的出来事である「ベルリンの壁崩壊」に因んだ、ドイツ人画家「ゲオルグ・バゼリッツ」の作品が描かれていました。

ムートンのような高価なワインは、何年かに一度、飲むことが出来れば有り難いわけですが、思わず「ジャケ買い」ならぬ「エチケット買い」をしてしまうワイン。
もちろん、私にもあります。

可愛いらしいエチケットですが、自宅に持ち帰り、よくよく意味を調べてみて「ハッ」としました。
「 l'attrape-cœur」と書かれていますが、「 L'Attrape-cœurs」とはサリンジャーの「 ライ麦畑でつかまえて」のフランス語のタイトル。
イラストは、 Jean-Pierre Desclozeaux(ジャン・ピエール・デソロゾー)さんという御歳80歳のフランスの風刺画家が担当しております。
2003年に村上春樹が翻訳したことから、多くの日本人も読んだことがあるだろう一冊かと思います。
ワインを抜栓し、おもむろに書棚から村上春樹が翻訳した本を取り出し、「s」があるかないか、大文字ではなく小文字なのか、その理由を含めて、どうしてこういうイラストになったのだろうかと考えているうちにソファーで眠ってしまっている。
「ジャケ買い」ワインは、睡眠薬代わりにもなる、面白そうな由縁を隠し持っている一本との「出会い選び」なのかも知れません。
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