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  • 執筆者の写真渡辺幸宏

モーツァルトが愛したワイン

更新日:2020年1月29日

 北海道も札幌に、ようやくオペラを演じることができる「 札幌市民交流プラザ 」が完成したというニュースに接しております。

 本物のオペラに接する機会があるかないか。これは、実際に観たことがある人には、その「文化的価値」を十分過ぎるほど理解できるでしょうし、それに接する社会資本が北海道にも完成したということは、素直にとても喜ばしいことだと思っています。


 私の3回目の東京勤務時代、渋谷の「オーチャード・ホール」にて、オペラを鑑賞する機会に比較的恵まれておりました。

 2005(平成17)年10月、ベルギー王立歌劇場来日公演「ドン・ジョバンニ(Don Giovanni)」。1787年10月に、プラハで初演されたモーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)の作品。


「ドン・ジョバンニ」をはじめとした、東京で観たオペラのプログラムの一部。


  1000人を超える女性を手篭めにしたという、スペインの伝説的貴族=蕩児(とうじ)「ドン・ファン」(イタリア語でドン・ジョバンニ。「ワインバー LA心VIN」の近所に「ドン・ファン」さんというカクテルバーがあるのは、奇遇でしょうか(笑)。)が主人公。  ドンナ・アンナを騙したジョバンニが、アンナの父である騎士長を殺害し、その間、ジョバンニはさらに好き勝手に女性をたぶらかし、最後には騎士長の亡霊によって地獄に落とされるというストーリー。

  感動的なのは、「ドン・ジョバーンニ!」と叫びながら現れる騎士長の亡霊の場面。もう一度この場面を“生”で観たいと、今でも思っています。地獄へと投げ捨てられた「ドン・ジョバンニ」が墓場に横たわる中、レポレッロ、エルヴィーラ、ツェルリーナ、マゼットという面々が、客席に座る我々を指差し「これが悪人の末路」と、あたかも「君もジョバンニのような人生を送ると地獄に落ちるのだぞ!」と言わんが如く歌い上げ、舞台は終わるのです。


  その当時、既に世界各国のワインを飲み研究に明け暮れていた(?)私が最も興味を抱いたのは、もちろん劇中に1度だけワインの固有名詞が出てきた場面。  ジョバンニが、騎士長の石像を晩餐に招き、最後に騎士長の亡霊に地獄に落とされる前のサルティ作曲の“漁夫の利をしめ”(だったと思う?)が流れていた。

 「“Marzemino マルツェミーノ”も沢山あるから、どんどん飲め」とジョバンニが叫ぶ。実は、字幕は「マルチミーノ」となっていた。もちろん、当時マルツェミーノ(葡萄の品種=セパージュ)の海外への輸出量は少なく、東京でも入手困難なセパージュ。必死にメモを取り、オペラ終了後あちこちのワイン酒屋に問い合わせたことは懐かしい記憶でもあります。

 ドン・ジョバンニの台本作者である ロレンツォ・ダ・ポンテ(Lorenzo Da Ponte)が綴り間違ったと言われておりますが、現代のオペラでも、台本通りに間違ったままの記載・表現をしているそうです。

 モーツァルトに関する書籍を調べてみると、イタリアに住んだときに飲んだマルツェミーノを、モーツァルトは生涯「美味しいワインだった」と語り続けていたという件に出会います。ただ、モーツァルトがイタリア旅行をした年齢は13歳、15歳のときのことであり、むしろ台本作者のダ・ポンテがヴェネト出身で30歳までヴェネツィアに住んでいたことから、モーツァルトというよりもダ・ポンテが愛したワインであり、イタリアから追放された腹いせに、ダ・ポンテがわざとに綴りを間違ったのではなかろうか。

 ワイン文化史研究家の私は、そう推論しているのでした。


 お店では、聞かれない以上の薀蓄を語ることはしませんが、ワインという飲み物は、本当に面白い飲み物だと思います。

 入手が難しいモーツァルトが愛したマルツェミーノ。

 数本入荷しております(ボトル売りでのご提供)ので、興味が沸いた方には是非お試しいただきたいと思っております。


モーツァルトが愛した「マルツェミーノ」。ボトルでのご提供となります。

 

 

 

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